領域代表からのメッセージ
硫黄、といえば、温泉、火山、下水の硫化水素の臭いを思い浮かべ、硫黄酸化物による大気汚染や酸性雨を思い浮かべ、ややもすればネガティブなイメージを持たれている元素かもしれません。しかし、近年の分析機器の進歩と新しい技術開発により、硫黄こそ、実は私達ヒトを含む全ての生命にとって根源的な役割を担っている元素であることがわかってきました。
硫黄の大きな特徴は、直鎖状に連結することができる、すなわち、カテネーションを形成できることです。たとえば、炭素原子もカテネーションを形成し、それにより有機物の多様性が生じるわけですが、それには、水素やその他の官能基が必要です。それに対して、硫黄は単独でカテネーションを形成できる唯一の元素です。硫黄カテネーションは、求核性と求電子性を併せ持つユニークな性質を示します。そこで、私達は、硫黄カテネーションを有する分子を、超硫黄分子と総称することにしました。
超硫黄分子は、従来の生物学・生化学からはすっぽりと欠落しています。その理由は、超硫黄分子が検出されず、観測されなかったからです。超硫黄分子は、化学的な反応性の高さゆえに不安定で、しかも、硫黄カテネーションの長さもまちまち、すなわち不均一です。再現性がよい分析を行うためには、その対象は安定で均一なものでなくてはなりません。そのため、これまでの生化学実験では、生体試料に過度な還元変性処理をすることで、人工的に安定で均一な試料に変換して計測を行ってきました。この結果、生体内に豊富に存在している硫黄カテネーションがすっかり削り込まれてしまい、多くの超硫黄分子が見落とされてしまったのです。
みなさんがいま調べているその細胞、そのタンパク質、その代謝物の中に、きっと超硫黄分子がたくさん入っているはずです。「硫黄生物学」領域では、みなさんに超硫黄分子の存在を実感していただけるよう、超硫黄分子の計測技術の普及を第一の目標に掲げています。そして、超硫黄分子を考慮した新しい生命科学の創出、超硫黄分子を利用したSDGsへの貢献を目指しています。これまで見えなかった超硫黄分子が見えるようになったら、生命科学にはどのような視界が開けるのか、この領域研究の展開にどうぞご期待ください。そして、硫黄生物学の「硫黄生物学」領域へのご参加、ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
領域代表 本橋 ほづみ(東北大学加齢医学研究所 教授)
What's new?
- 2023年02月07日
本橋先生(計画研究A02班)と赤池先生(計画研究A01班)の論文が発表されました。
詳しくはこちらをご覧ください。 - 2022年11月30日
班友の有澤先生の論文が発表されました。詳しくはこちらをご覧ください。
- 2022年10月07日
- 2022年09月22日
村上先生(公募研究A01班)の論文が発表されました。詳しくはこちらをご覧ください。
- 2022年09月14日
丸山先生(公募研究A03班)の論文が発表されました。詳しくはこちらをご覧ください。
- 2022年09月06日
猪熊先生(公募研究A01班)の論文が発表されました。詳しくはこちらをご覧ください。
- 2022年08月25日
- 2022年08月25日
清水先生(A03増田班)の論文が発表されました。詳しくはこちらをご覧ください。
リンク① https://www.mdpi.com/2076-2607/10/5/908
リンク② https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/files/20220427-pr-sobun-02.pdf - 2022年07月28日
- 2022年06月16日
領域代表の本橋教授と領域メンバーの西田教授が主催する国際NO学会が本年10月末に仙台市で開催されます。またこの学会の前後で、超硫黄に関連する国際会議が開催され、本領域からも多数のメンバーが参加し、最新の情報を発信します(Redox Week in Sendai 2022)。ぜひ多くの皆さまのご参加をお待ちしています。詳しくはホームページを御覧ください。
- 2022年03月30日
- 2022年03月28日
- 2022年03月25日
- 2022年03月11日
計画研究代表者 東北大学 赤池孝章先生が『太田原豊一賞』を受賞しました!
感染症や血液の研究に功績『太田原豊一賞』贈呈式【熊本】(TKUテレビ熊本) - Yahoo!ニュース - 2021年12月24日
- 2021年10月19日