A03:超硫黄分子が担うシグナル伝達

増田 真二           東京工業大学生命工学院・准教授

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 細胞が生まれて程なく確立した硫化水素代謝系は、生物進化と密接に関連しつつ多様化し、その過程で硫化水素を認識するシステムも様々に発達してきたと考えられます。例えば、硫化水素を電子源に光合成を行う細菌や、変動する硫化水素環境に晒される腸内細菌は、外界の硫化水素濃度を適切に感知する機構を独自に発達させてきたと考えられます。また動物においては、超硫黄分子の代謝過程で発生する硫化水素が電子伝達系を駆動することがわかってきています。しかし、硫化水素に依存した細胞内シグナル伝達機構はよくわかっていません。そこで本研究では、細菌をモデルとした研究により、硫化水素依存の超硫黄分子の生成過程や、超硫黄分子の細胞内認識機構とその生理的重要性を明らかにし、新たな抗生物質のターゲットや腫瘍の診断への応用といった硫化水素・超硫黄分子利用の可能性を検討します。

 

研究分担者

清水 隆之(奈良女子大学 研究院自然科学系・准教授)