A01:過硫化による機能調節メカニズムを解明するタンパク質NMR構造解析技術の開発

徳永 裕二 
東京大学・大学院薬学系研究科(薬学部)・助教

 超硫黄分子はタンパク質の修飾を介してその機能を調節すると考えられていますが、タンパク質の超硫黄化がどのように複雑で柔らかいタンパク質の立体構造に摂動を与え、その機能を調節するのかという構造メカニズムの多くは未解明です。本研究では、核磁気共鳴(NMR)法を駆使して、化学的に不安定な超硫黄修飾状態のタンパク質の構造ダイナミクスを溶液中でありのままに捉える方法論を構築します。大腸菌におけるtRNA硫黄修飾反応経路を構成するタンパク質を対象として、硫黄運搬時にタンパク質中のCys残基が積荷硫黄原子を受け取ることで形成される過硫化(Cys-SSH)状態の構造ダイナミクスを解析することにより、これらのタンパク質を介した効率的な硫黄運搬の構造メカニズムを解明します。ここで構築される技術・解析系を領域内に幅広く共有することで、超硫黄分子が司るタンパク質機能制御の構造メカニズムの解明に貢献します。