B01:硫黄の柔軟な電子授受の制御による二酸化炭素の還元および次世代製鉄法への学際研究

田原 淳士 
東北大学・学際科学フロンティア研究所・助教

 チオ―ル (RSH) は、酸素類縁体であるアルコール (ROH) と比較して「プロトン (H+) を放出しやすく」「水素ラジカル (H·) を放出しやすい」という興味深い二面性を有しています。このような硫黄の持つ電子授受の流動性は生体内では高度に制御されたシステムとして生体活動の維持に活用されていますが、生体外や産業界においてこの酸化還元活性が効果的に機能するシステムの開発例は限られています。 本研究では、硫黄のこの柔軟な電子状態を制御し、有機金属化学(東北大学際研)、化学工学(九大先導研)、生化学(東北大薬)、そして本領域の四分野横断型の学際研究により、二酸化炭素およびその還元体を含む種々の分子の還元システムを開発することを目的としています。目標の一つに、二酸化炭素の還元によるシュウ酸合成を想定しています。生成物であるシュウ酸は製鉄産業におけるコークスに代わる還元剤としての利用を想定しており、硫黄を鍵とした Net-Zero-Emission 型の次世代製鉄法による地球規模での炭素循環を目指しています。