B01:シアン解毒・硫黄転移二酵素の生理的役割の解明

石井 功 
昭和薬科大学・薬学部・教授

 我々哺乳類が、猛毒のシアン化物(青酸)イオンCNに硫黄原子Sを転移してチオシアン酸イオンSCNに弱毒化する酵素ロダネーゼ(Thiosulfate Sulfurtransferase [TST])を持つことは広く知られていますが、実際ヒトが植物青酸配糖体などCNを多く含む食物を日常的に摂る、あるいはCNに環境被爆する機会は無く、生理的役割は不明です。TSTのゲノム近傍に位置する相同酵素で現在第4の硫化水素(超硫黄)産生酵素として注目されるMercaptopyruvate Sulfurtransferase [MPST]も、in vitro 実験ではThiosulfateを基質とするTST活性を有しますが、その役割も不明です。我々は、他二種の硫化水素産生酵素を解析してきた経験をもとに、TST/MPST両シアン解毒・硫黄転移酵素の未知の役割を探っていきます。