石井 功
昭和薬科大学・薬学部・教授
我々哺乳類が、猛毒のシアン化物(青酸)イオンCN–に硫黄原子Sを転移してチオシアン酸イオンSCN–に弱毒化する酵素ロダネーゼ(Thiosulfate Sulfurtransferase [TST])を持つことは広く知られていますが、実際ヒトが植物青酸配糖体などCN–を多く含む食物を日常的に摂る、あるいはCN–に環境被爆する機会は無く、生理的役割は不明です。TSTのゲノム近傍に位置する相同酵素で現在第4の硫化水素(超硫黄)産生酵素として注目されるMercaptopyruvate Sulfurtransferase [MPST]も、in vitro 実験ではThiosulfateを基質とするTST活性を有しますが、その役割も不明です。我々は、他二種の硫化水素産生酵素を解析してきた経験をもとに、TST/MPST両シアン解毒・硫黄転移酵素の未知の役割を探っていきます。