A03: 貧栄養性微小環境を勘案した悪性形質を支持する膵がん-間質間の硫黄代謝連携の理解

山本 雄広 
慶應義塾大学・医学部(信濃町)・講師

 硫化水素や活性硫黄種は、「古典的」な抗酸化物質であるグルタチオンやヒポタウリン同様に抗酸化作用を持つ事が知られており、がん細胞のフェロトーシス回避や抗がん剤などの解毒、タンパク質チオール基の翻訳後修飾などに作用して、がんの悪性形質獲得に寄与します。難治性がんとして知られる膵臓がんは、がん細胞領域に比べ間質成分が多いという特徴を持ち、がん-間質間の代謝コミュニケーションの成立がその悪性形質を支持する上で重要である事が示唆されていますが、その機構は依然不明です。本研究では硫化水素や活性硫黄種産生酵素の特異的な発現様式に着目し、がん⇔間質など異種細胞間の代謝連携や炭素代謝と硫黄代謝と協調的代謝制御を介した膵がん細胞の増殖、転移能等の悪性形質獲得に介在するメカニズムを生化学的に解明し、難治性がん克服へ新しい方策の開発を目指します。

研究協力者

末松 誠(公益財団法人実験動物中央研究所・所長)